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浜野歯科医院
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副院長 浜野弘規の論文

副院長 浜野弘規の論文

第1回 21世紀の遺伝子 遺伝子医療

副院長 浜野弘規の論文

21世紀が遺伝子=geneに代表される「G」の世紀といわれ、(因みに20世紀後半の1990年代は、internetやiMacやiModeといった情報産業の普及から、「I」の時代ともいわれていました。失われていく愛?にからめていることもあるそうですが・・)遺伝子研究がこれからのビッグビジネスにつながるといわれるのは、遺伝子関連の技術が病気の診断・治療から食糧生産、さらに人間の生命観にまで大きく変革をもたらすといわれているからです。今回は遺伝子医療にまつわるキーワードを、現在の歯科医療への現状と将来の可能性を交えて解説します。

<遺伝子診断>
ー歯周病は遺伝子によって予知できるか?ー

病気の原因が明らかに遺伝子によって「かかりやすい」と解明できる疾病(癌やある種の糖尿病、一部の感染症)への診断はすでに応用されています。歯科界におけるこれらの研究も、齲蝕・歯周病や口腔癌の原因解明として現在盛んに行われ、成人型歯周病におけるサイトカイン遺伝子IL-1などはすでに商品として臨床の現場で応用されました。しかし多くの疾患は特定の遺伝子のみが関与するわけでなく、また歯科疾患は生活習慣などの環境因子の要素の割合も大きいため、遺伝要因と環境要因の相関関係の検討が重要と思われます。しかしながら、歯科医療における遺伝子研究は診断・治療における今後の新たな手段としての可能性が期待されるので、そのための心構えも重要です。

<再生医療>
ーエムドゲインはセメント質を再生させる?ー

再生医療とは、「人体の内在性に存在する幹細胞を活性化させて人体の再生力を賦活させ、病気の治療を図る」と定義されます。この発展には、最近明らかになった幹細胞(ES細胞)ーすなわち種々の臓器細胞に分化できる機能を持つ未分化な細胞ーが開発や、様々な組織の発生過程が分子生物学的に詳細に明らかにされつつあることに起因しています。これらの技術が人工材料と組みあわせて開発が進んでおり、特に肝臓や皮膚などの組織などでは激しい開発競争が繰り広げられています。歯科界でもこのような発生学の考えー歯牙発生時のセメント質の形成を誘導するエナメル質タンパクーから1997年に歯周組織再生誘導材料「エムドゲイン」が誕生し、歯周治療に新たな風ー胎生期のタンパクが歯周組織再生を促すーを吹き込みました。「再生医療」の言葉は、臨床的に置き換えると「患者本人の細胞を使って広範囲におよぶ組織欠損や失われた組織機能を回復する試み」とも解釈できますので、歯周組織の再生に限らず、齲蝕などの小さい欠損の再生から、やがて大きな顔面補綴の組織再建までを具体的、効率的に実現できる可能性として、新しい臨床応用が期待されます。

<オーダーメイド医療>
ー補綴物はオーダーメイド医療?ー

この言葉は医科界の特に癌治療の視点から来た言葉と思います。「医療は個別化」といいながら、癌という診断に基づき、効くか効かないか予測できないまま抗癌剤などを投与していたのが今までの治療の主体のようでしたが、サイズを測定した上で着心地のいい洋服を「オーダーメイド」するごとく、それぞれの患者の病気の状態を正確に捉えて(すなわち遺伝子の情報にて病状を測定する)副作用のない有効な治療法(薬)を提供するような医療を「オーダーメイド医療」と東大医科研の中村祐輔先生は命名しました。とはいっても、歯科医療の根幹である補綴物ー患者さん個人の情報(模型/咬合状態)をもとに作成し、患者さんの機能回復に寄与している医療行為ーはまさに広い意味で「オーダーメイド医療」そのものではないでしょうか。補綴物はすでに「オーダーメイド医療」の体制ですので、難治性の根治やぺリオなどが、これからの歯科界の「オーダーメイド医療」の課題ではないでしょうか。

<ゲノム研究とこれからのゲノム医療>
ーゲノムの力は、歯を人工的に作成することができるか?―

感染症の減少と疾患構造の変化に伴い、少子・高齢化社会に向かうなかで、近年ヒトゲノム解析・DNA診断・ゲノム創薬・発生工学・遺伝子治療などの先端医療、生命倫理・医療経済など「21世紀の医療」に対する関心が高まっています。その根幹をなすのが「ゲノムー生命活動ができる必要十分な遺伝情報」です。歯科界でもこの流れを受けて、最も盛んな研究もこの「ゲノム歯科研究」。やがて「エナメル質ー象牙質ーセメント質」という「歯のゲノム」情報から、歯を人工的に作成できる時代が近い将来訪れるかもしれません(そうなったらインプラントもいらない?今の補綴治療はどうなるのでしょうか?)。
  また、ゲノム医療の目的が「個にあった医療」であることなので、現在叫ばれている予防歯科の諸問題を解決できる大きな手段として期待できますが、歯科疾患そのものが非特異的な感染症が主体であり、誘因としての生活習慣など、個人の価値観に依存するものが多いことから、ゲノムにもとづく「ゲノム歯科医療」の道は、本質論の解決そのものにはなかなか実現しづらいように思います。しかし医療界そのものが、「ゲノム」の考えにシフトしつつある現状に於て、歯科医療界も「ゲノム」への客観的な知識研鑽の環境と、EBMなどによる正確な現状の問題把握の体制が重要と思われます。医療手段として多くの期待が注目されるゲノム研究はその反面、遺伝情報が個人のプライバシーであることが指摘され、遺伝情報が結婚や就職時の差別につながることも早くも問題化になってきていますので、研究者や医療従事者の高いモラルが今後更に求められるでしょう。

●参考文献:
中村祐輔 先端のゲノム医療を知る 羊土社 2000
浜野弘規 エムドゲインの歯周組織における生物学的背景 
歯界展望Vol.95 No.2 471-481, 2000
再生医学から再生療法へ 実験医学 Vol.3 No.4 羊土社 2000
産業化に動き出した再生医療 Biobeベンチャー 羊土社 2001
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