スポーツは観るだけでも健康になる?!

   

院長の病理学の先輩でもあり、歯科心身学における第一人者の安彦先生が当院に書き下ろしてくれた、お口と心の悩みの解説の特集です。

年が明けたと思ったら、もう4月です。
エスコンフィールドが以前の札幌ドームより劣る数少ない点の一つに、春先の試合観戦の寒さが挙げられます。エスコンは半屋内のような構造で、天候に関わらず入退場口が開けられているため、春先の寒い時期にはダウンジャケットなどを着ていないと、じっと観戦している間にかなり寒く感じることがあります。
スポーツ観戦も楽しいですが、私は定期的にスポーツをしないと体調がすぐれなくなるようで、真冬でも雪の上を走っています。
1月末には東京をはじめ、各地へ1週間の出張がありました。雪のない環境で外を気持ちよくジョギングできたのも束の間、札幌に帰る日の朝、左膝に激しい痛みを感じ、足を引きながら戻ることになりました。
前日、都内のビアバーで同僚とアルコール度数の高いビールを「美味い!」と言いながら何杯も飲んだ結果、どこかで膝を強くぶつけたようです。
その影響で1か月間も足を固定することになり、せっかく雪のない道路で鍛えた筋肉も落ちてしまいました。

スポーツを定期的に行うことが健康に良いというエビデンスは数多く存在しますが、ではスポーツ観戦はどうなのでしょうか?
サッカーが盛んなラテン系の国々では、大事な試合で応援に熱が入りすぎて、ハートアタックなどで亡くなる人がいるという話をよく耳にします。
さすがに日本では、人生を懸けるような熱狂的な応援をする人は少なく、大事な試合で心臓発作を起こす話はあまり聞きませんが、興奮すると一時的に血圧が上がる可能性はありそうです。
一方で、アルコールを飲んでいる最中は血圧が下がるため、「お酒を飲みながらのスポーツ観戦は、興奮とのバランスが取れて良いのかもしれない」と勝手に思っています。
最近、「スポーツをする」のではなく「観戦する」ことも健康に良いことを示す論文が発表されました。今回は、その研究について紹介します[1]。

この研究は、明治安田ライフスタイル研究の一環として行われ、東京の明治安田新宿メディカルセンターで毎年健康診断を受けている成人を対象としました。
調査対象者の多くは首都圏とその近郊の住人でした。2017年(ベースライン時点)には11,870人からデータを収集し、ライフスタイル(スポーツ観戦習慣を含む)、心臓に関わる健康状態、仕事関連のデータ、幸福感に関する調査を実施しました。
2018年には8,296人、2019年には6,701人からデータを取得し、最終的に6,327人が調査対象となりました。対象者の平均年齢は50.7歳で、女性が48.9%、既婚者が71.8%、大学卒以上が81.7%でした。
スポーツ観戦の習慣については、27.8%が週に1日以上テレビやメディアで観戦し、21.7%が年に2日以上現地で直接観戦していました。
その結果、現地観戦を過去1年間に1日もしていなかったグループ(65.5%)と比較して、2日以上観戦していたグループ(21.7%)は、中等度の心理的ストレスを抱えるリスクが17%低く(リスク比0.83)、重度の心理的ストレスを抱える人も有意に少ないことが分かりました(オッズ比0.43)。
また、現地観戦の頻度が高いほど、心理的ストレスのリスクが低下する傾向が見られました。
さらに、現地観戦をしている人は脂質異常症のリスクが低く、生活習慣の改善にも積極的であることが示されました。
一方、メディアでの観戦に関しても、過去1か月間に1日も観戦しなかったグループと比較すると、週に1日以上観戦していたグループは運動不足が少なく、朝食を抜くことも少なく、幸福感が高い傾向にありました。
しかし、メディア観戦には肥満や生活習慣病のリスクが潜んでいることも示唆されています。

この研究では、「スポーツ観戦をすることでメンタルヘルスや生活習慣が改善される可能性がある」との結論が示されましたが、私は「スポーツ観戦をする人は、そもそも自分でもスポーツをする機会が多いのではないか」と考えています。
何十年も前、バンクーバーに住んでいた頃のことを思い出しました。
自宅近くのゴルフ場でプロトーナメントが開催され、その隣には手頃なショートコースがありました。私はトーナメントを観戦しませんでしたが、その時に友人とショートコースへ行くと、普段は閑散としているコースがかなり混雑していました。
プロトーナメントを少しでも観戦した人が、「自分もゴルフをやってみたい!」とショートコースに殺到していたのです。
プロの華麗なプレーを見ていると、自分には到底できないと分かっていても、つい挑戦してみたくなるものです。この論文では直接触れられていませんが、スポーツ観戦の多い人は、自分でもスポーツをする機会が多く、そのことが健康面での良い影響をもたらしているのではないかと私は思います。
私自身、いまだに膝に固定器具をつけているため、スポーツをしたくてもできないストレスを感じています。
そもそも、どこで膝をぶつけたのか記憶が曖昧ですが、そういえばサッカーをしている夢を見ていたような……。スポーツをやりたい気持ちが強すぎると、夢の中でスポーツをしてしまい、思わぬ弊害が出ることもあるのかもしれませんね。

1) Kawakami R, Kitano N, Fujii Y, Jindo T, Kai Y, Arao T. Association of watching sports games with subsequent health and well-being among adults in Japan: An outcome-wide longitudinal approach. Prev Med. 2024 Dec;189:108154. doi: 10.1016/j.ypmed.2024.108154. Epub 2024 Oct 20.



はまの歯科医院:https://www.hamanodc.com/

〒232-0024 横浜市南区浦舟町4-47-2 メディカルコートマリス202
電話:045-251-4181

電車でお越しの方:
横浜市営地下鉄「阪東橋」駅下車 徒歩5分
京浜急行「黄金町」下車 徒歩10分
横浜市営バス「浦舟町」下車 徒歩1分

PAGE TOP