サバによる食中毒?アレルギー?

   

院長の病理学の先輩でもあり、歯科心身学における第一人者の安彦先生が当院に書き下ろしてくれた、お口と心の悩みの解説の特集です。

先週はかなり忙しく、さらに無駄なストレスもありました。そんな時、急に身体に発疹が出てしまいました。蕁麻疹か。。。ん??原因はストレスか??蕁麻疹は病理学の教科書的では、I型アレルギーの範疇に入り、これは一般的に言われている多くのアレルギー、花粉症や喘息などと同様のメカニズムで発症するとされています。このようなアレルギー性疾患の多くは、ストレスが発症や悪化に関与しています。

例えば、これはある学会で報告された極端な例ですが、ある中年の女性が高度の喘息発作で入院することになり、入院後直ぐに症状は寛解したものの、ご主人がお見舞いに来たところ高度の喘息発作が再発したとのことです。ご主人が女性のストレスとなっており、そのストレスで喘息発作が再発したとの症例でした。このようなことから、今回の発疹はストレスによる蕁麻疹かなとも思っておりました。発疹は前夜の変則的な飲み会の後から出現し、翌日の学会でのシンポジウムの後に一段と悪化していました。シンポジウム後に発疹の悪化に気がつき、シンポジストの先生にみせたところ、「昨夜、鯖食べていないですか?私は以前、鯖食べて先生と同じ様な症状の出たことがあるで。」と聞かれ、そういえば〆ていない鯖を、一人で安い立ち食い寿司によって食べたことを思い出しました。いやいやいや、鯖のアレルギー??と思い調べてみたところ、古くなった魚によるヒスタミン中毒という病名に辿り着きました。ヒスタミン中毒は、魚が捕獲されてから適切で、に冷却・保存されない場合、魚の中に含まれるヒスチジンというアミノ酸が細菌によって分解され、ヒスタミンが生成されます。特に、サバやマグロ、カツオなどの魚にはヒスチジンが多く含まれているため、ヒスタミンが生成されやすいとのことです。ヒスタミンが高濃度に含まれる魚を摂取すると、体内に過剰なヒスタミンが取り込まれて、これがアレルギーのような反応を示すとのことです。ヒスタミンは炎症やアレルギー反応の初期に生体内で産生され、炎症やアレルギー反応のスイッチをオンにするような化学物質です。このことから、ヒスタミンを抑える抗ヒスタミン剤が風邪薬やアレルギーの薬に入っています。鯖が原因なのかどうなのか、擬似暗鬼で週末を過ごし、月曜日皮膚科を受診したところ、診て直ぐに「普通の蕁麻疹ではなく、中毒ですね。」とのことでした。やはり、鯖が原因だったのか。。。?そうであれば、平たく言うと鯖による食中毒とことになります。安い立ち食い寿司なんか酔っ払って寄ってはいけませんね。

ヒスタミン中毒が起こりうるヒスタミンの濃度を示した論文を紹介します[1]。この論文では、1959年から2013年までに発表されたヒスタミン中毒に関する報告書のシステマティックレビューとメタ分析を行っています。55件の報告書が含まれ、これらの研究では103件の事例が報告されています。その結果、中毒サンプルのヒスタミン平均濃度は1107.21 mg/kgでした。ヒスタミン中毒に関係する論文にみられた魚は主にマグロまたはカジキマグロでした。中毒を起こした患者の他の要因、すなわちアルコール摂取の有無や、服薬の有無やその種類、さらに他のヒスタミン放出食品の摂取の有無と中毒症状発症との間に有意差はみられませんでした。「中毒サンプルのヒスタミン平均濃度は1107.21 mg/kg」この濃度はどの程度の魚の状態なのか、ChatGPT-4oに聞いてみました。答えは「ヒスタミンの濃度1107.21 mg/kgは非常に高い数値です。一般的な食品中のヒスタミン濃度と比較すると、例えば、よく知られている食物アレルギーの原因となる魚類の中で、腐敗が進んだ魚では1000 mg/kg以上のヒスタミンが含まれることがあります。このため、1107.21 mg/kgのヒスタミン濃度は、腐敗が進んだ魚と同程度の濃度であると言えます。これは食品衛生上、非常に危険なレベルであり、摂取するとヒスタミン中毒を引き起こす可能性があります。」とのことでした。今回の発疹の原因がもし鯖であると断定されるなら、腐りかけた鯖を食べさせられたことになります。酷いですね!!

皮膚科からはステロイドの塗り薬と、抗ヒスタミン剤が処方されました。抗ヒスタミン剤は前述の様に風邪薬やアレルギーの薬に含まれており、少し前のニューズレターでも紹介しました様に眠気に襲われることで有名です。これは脳内にも存在するヒスタミンが覚醒時にはある程度の量があるものの、睡眠時には一気に減少して、眠りに入ることと関わっています。すなわち、抗ヒスタミン剤のよって脳内のヒスタミンが減少すると眠くなるということです。これを逆手にとった薬が「ドリエル」です。ドリエルは市販されている睡眠導入を助ける薬であり、主成分に抗ヒスタミン効果のあるものが使われています。裏を返すと、ドリエルも理論的には抗アレルギー薬として使える訳です。ただ、抗ヒスタミン剤により起こりうる副作用として唾液分泌量の低下があることも知っておいた方が良いと思います。かなり前に、海外出張の際に、機内で眠ろうと思い抗不安薬を飲んだのですが、想定よりも早く目が覚めてしまったため、どうしようかと考えていたところ、アレルギーの薬のあることに気がつき飲んでみました。確かにもう少し眠れたのですが、唾液分泌が抑制され、気が付いたら喉がカラカラ、機内の乾燥もあって完全に喉を痛めて風邪を引いてしまったことを覚えております。

1.Colombo FM, Cattaneo P, Confalonieri E, Bernardi C. Histamine food poisonings: A systematic review and meta-analysis. Crit Rev Food Sci Nutr. 2018 May 3;58(7):1131-1151.



はまの歯科医院:https://www.hamanodc.com/

〒232-0024 横浜市南区浦舟町4-47-2 メディカルコートマリス202
電話:045-251-4181

電車でお越しの方:
横浜市営地下鉄「阪東橋」駅下車 徒歩5分
京浜急行「黄金町」下車 徒歩10分
横浜市営バス「浦舟町」下車 徒歩1分

PAGE TOP