第56回 加工肉の害?

   

院長の病理学の先輩でもあり、歯科心身学における第一人者の安彦先生が当院に書き下ろしてくれた、お口と心の悩みの解説の特集です。

習慣的にお酒を飲まないのにかなり太っている人や、ベジタリアンであるにも関わらず太っている人があります。中東の国々では、お腹が出ていることが男性らしさの象徴とされることもあり、これが全身を覆う伝統的な白い服、トーブに似合うとも言われています。

先月、フランクフルト空港のビジネスラウンジでのことです。搭乗前にシャワーを浴びてリラックスしていた際、夕食にソーセージ、ベーコン、サラミなどの加工肉とチーズのオンパレードがありましたが、野菜はほとんどザワークラウトだけでした。

また、ドーナツ、プレッツェル、様々な種類のドイツパン、バター、ジャムもありました。そこには、インド系の男性がお腹を出しながら座っていました。彼はビールグラスにコーラを注ぎ、片手にはドーナツを三段重ねにし、プレッツェルを皿に乗せ、ジャムを手に取りながら食べ始めました。食事をすぐに食べ終え、同じ量をおかわりしました。彼は、お酒は一切飲んでおらず、おそらく飲む習慣がないのでしょう。

近年、飲酒の害に関する報告は増えていますが、どちらが健康に良いのでしょうかね?

今回は超加工食品が本当に身体に悪いことを示す論文を紹介致します。

超加工食品とは英語で Ultra-processed foods と呼ばれているものであり、肉の形状や組織が変化し、添加物や調味料が使用されています。例えば、その代表例である超加工肉には、ハム、ソーセージ、ベーコン、肉団子、肉まんなどがあり、これらの製品は通常、保存性を高め、風味や食感を向上させるために添加物も使用されています。

その他、超加工食品には、人工的に砂糖を加えたジュース、マーガリン、ポテトチップス、マヨネーズなどが代表例です。

研究は、スペインの大学卒業生が登録されたデータベースSUNの1999~2018年間のデータを用いています。1999~2014年の期間に、20~91歳の1万9,899人(女性12,113名、男性7,786名)を2年ごとにフォローアップし、食品と飲料の摂取状況を、NOVA分類による加工の程度で分類して、妥当性が確認された136項目の食品頻度質問票を用いて評価しています。

超加工食品の1日摂取量(低[<2サービング/日]、低~中[2~<3サービング/日]、中~高[3~≦4サービング/日]、高[>4サービング/日])で調整したエネルギー消費量と全死因死亡の関連とし、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析しています。

研究追跡期間中に335人が死亡しており、死亡者の超加工食品の摂取量を評価したところ、超加工食品が1サービング増えるごとに、全死因死亡が相対的に18%増加していました。また、消費量の高い群では死亡率の危険性が68%増加することが明らかとなっています[1]

この論文は2019年に発表されたものですが、その後、超加工食品が様々な癌の発症[2]、炎症性腸症候群の発症[3]、心臓血管疾患[4]、うつ病や不安障害[5]の発症と関わっていることのエビデンスを示す論文が近年次々に発表されてきています。

超加工食品、特に加工肉が健康に悪影響を及ぼすトップの食品であることは広く認識されており、特に欧米では日本以上に注意喚起が行われています。

しかしながら、ソーセージ大国であるドイツのように、食文化として深く根付いている地域での注意喚起は困難な様です。

世界的な健康ブームの中で、加工肉の害が広がっていることに対し、私が特に懸念しているのは我が北海道のプロ野球チームです。メインスポンサーが加工肉の名を冠しているため、スポーツと健康を結びつける観点から問題があると思われるかもしれません。

一部の欧米の国々では、加工肉の摂取に対する警告をタバコと同様に厳しく行い、その宣伝やスポンサーシップを禁止する動きもあるようです。例えば、イギリスでは、子供向けの番組や特定の時間帯に不健康な食品のテレビ広告を禁止しています。

青少年の健全な育成を損なう恐れがあると指摘される前に、企業名を変更することも一考の価値があるのでは。。。


参考文献

  1. Rico-Campà A, Martínez-González MA, Alvarez-Alvarez I, Mendonça RD, de la Fuente-Arrillaga C, Gómez-Donoso C, Bes-Rastrollo M. Association between consumption of ultra-processed foods and all cause mortality: SUN prospective cohort study. BMJ. 2019 May 29;365:l1949.
  2. Pu JY, Xu W, Zhu Q, Sun WP, Hu JJ, Cai D, Zhang JY, Gong JP, Xiong B, Zhong GC. Prediagnosis ultra-processed food consumption and prognosis of patients with colorectal, lung, prostate, or breast cancer: a large prospective multicenter study. Front Nutr. 2023 Oct 2;10:1258242.
  3. Chen H, Fu T, Dan L, Chen X, Sun Y, Chen J, Wang X, Hesketh T. Meat Consumption and All-Cause Mortality in 5763 Inflammatory Bowel Disease Patients: A Prospective Cohort Study. Am J Gastroenterol. 2021 Dec 1;116(Suppl 1):S1.
  4. Chen X, Chu J, Hu W, Sun N, He Q, Liu S, Feng Z, Li T, Han Q, Shen Y. Associations of ultra-processed food consumption with cardiovascular disease and all-cause mortality: UK Biobank. Eur J Public Health. 2022 Oct 3;32(5):779-785.
  5. Sun M, He Q, Li G, Zhao H, Wang Y, Ma Z, Feng Z, Li T, Chu J, Hu W, Chen X, Han Q, Sun N, Shen Y. Association of ultra-processed food consumption with incident depression and anxiety: a population-based cohort study. Food Funct. 2023 Aug 14;14(16):7631-7641.


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