「鮒ずし」を求めて 琵琶湖「ふたり旅」

   

院長の父親である大先生・浜野文夫が約30年にわたって全国各地の「味の旅」13巻のアーカイブ集です。

今、琵琶湖にいる。娘と一緒にいる。今回は「ふたり旅」である。旅の目的はいつも「味の旅」である。今回、目的は琵琶湖の「鮒ずし」である。
かつて、琵琶湖周辺に旅をして、琵琶湖を一周することができた。その先々で琵琶湖の珍味に出会えた。特に「鮒ずし」である。古くから琵琶湖の固有種、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ウグイ、モロコ、ナマズなどを「なれずし」にした。

「なれずし」とは、主に魚と塩とコメで乳酸発酵させた食品で、鮓(すし)の原型である。いまだに伝統的な文化として残っているのは「鮒ずし」だけである。
近江の人たちは、古くから鮒ずしに親しんできた。親から孫へと伝えられ、子どもの頃から、お腹をこわした時でも、風邪をひいた時でも、鮒ずしを与えられ、気がついたら病み付きになっていたという。現在は、滋賀県以外に鮒ずしが存在しているところはない。
フナを塩とご飯だけで漬けて発酵させるという単純な製法だけに、漬け方によって味は千差万別、家庭によって風味や味が異なるといわれる。

これだけの文化を理解しようと、琵琶湖を一周しながら何度も試みた。湖北の『想古亭』『浜湖月』『鳥新』、五個荘『納屋孫』などで食べ、また、大津や米原ではお土産として買って食べたが、旨い、不味いの判断より、どうしてもあの強烈な臭いは好きになれなかった。
それなら好きになるまで食べようと、湖西地方・堅田の『魚清楼』(うおせいろう)という店を訪ねた。江戸時代から続く老舗料理旅館である。大学同期生2人を誘った。

『魚清楼』は、堅田の落雁で知られる「浮御堂」に隣接し、二階の座敷からは、目の前の浮御堂越しに琵琶湖周辺が見渡せ、夕暮れの対岸の明かりが美しく映える。絶好のシチュエーションだった。
湖魚料理は、①モロコ塩焼き、②鮒の子まぶし、③鯉の甘露煮、④北湖シジミ味噌汁などで、⑤お目当ての鮒ずしは、腹に子がいっぱい詰まった鮒を輪切りに切ってお皿に円形に並べた形は芸術品といってもいいほど美しい。そしてくせもなく、いやな臭いもなく、念願の逸品に出あえた。
この一品が忘れられずにいて、もう一度「ひとり」でもいいから行ってみたいと思って、すぐに店に電話をしたところ、「ひとりではお断りです」というので、二女・眞喜を誘って、『魚清楼』を目指した。

心配していた台風14号も過ぎて、堅田の「浮御堂」は夕日を受けて輝いて見えた。隣は『魚清楼』である。部屋からは「浮御堂」が見え、「湖」が見え、絶好の景色である。
料理は①ゴリのつくだ煮、②鯉の洗い、③本モロコの炭火焼き、④鮒ずし、⑤アユの塩焼き、⑥瀬田シジミの吸い物、⑦ご飯・漬物、⑧果物などで、すべて美味しく頂戴した。目的の鮒ずしも旨かったが、特にアユの塩焼きは感動するほどだった。
この夕食だけが目的だったので、他に観光することなど考えていなかった。景色の美しさは、おまけだった。

翌日は「道の駅」に寄って、琵琶湖特産の①スゴモロコ佃煮、②ふなずし、③琵琶湖産しじみ、④アユ醤油煮、⑤アユ佃煮、⑥シジミしぐれ煮などを買った。
こうして「琵琶湖ふたり旅」は終わった。今回、娘との「ふたり旅」で、娘の気配りがあってこそ旅が出来たことに感謝した。次回の「ふたり旅」は、初夏の北海道に行って、北の海の幸を求める旅にしたい。

(令和六年十月)



はまの歯科医院:https://www.hamanodc.com/

〒232-0024 横浜市南区浦舟町4-47-2 メディカルコートマリス202
電話:045-251-4181

電車でお越しの方:
横浜市営地下鉄「阪東橋」駅下車 徒歩5分
京浜急行「黄金町」下車 徒歩10分
横浜市営バス「浦舟町」下車 徒歩1分

PAGE TOP